NISAを開設し、さあどれを買おうととインターネットで探していると、S&P500や全世界、全米というものがオススメということを目にするかと思います。いくつかある中で、どれを購入しようか迷うこともあります。結論としては好みということにはなってしまいますがそれぞれの特徴とどういったパフォーマンスをこれまでに上げてきたのか見てみたいと思います。
ここでは、過去のデータをもとにどのようなリターンだったかを比較していきます。
こんな方におすすめ
- 米国株式と全世界株式の違いを知りたい
- 米国株式のメリットは何か
- 全世界株式のメリットは何か
- 積立NISAで買うものを悩んでいる
S&P500、全米、全世界の比較
米国株の選抜メンバー500社と、米国すべて、全世界まるごと、それぞれの特徴と3つの比較を行ってみましょう。
今回、過去のパフォーマンスを調べる上で使うETFはVOO(S&P500)、VTI(全米株式)、ACWI(全世界株式)です。2010年からの運用成果になります。将来はどうなるかわからないので、今後も同じように動くとは限りませんが、判断材料の一つとして参考にすることができます。
このデータから分かることは、
全世界は他2つを下回る
ブレ幅が1番小さいのはS&P500
シャープレシオが1番高いのはS&P500
全世界は他2つを下回る
運用成果でみてみるとS&P500と全米が同じくらいのパフォーマンスに対し、全世界はその2つを下回るという結果になりました。全世界と言っても米国株は全体の約6割を占めています。それにより米国株と似たような動きをしています。2020年のコロナショックでも大幅に下落していますね。米国株に関わらず、すべての株式に影響を与えていました。積立NISAは、一度買ったものは基本的には20年間保有することになります。長い期間をみてみると、米国株と全世界でこんなに大きな差ができることがわかります。なお、S&P500は全米株式の約8割をカバーしています。それにより、ほぼ同じ動きをしています。
ブレ幅が1番小さいのはS&P500
S&P500 13.3% 全米株式 13.86% 全世界株式 13.8%
ブレ幅は値動きの激しさを意味します。値が大きいほど上げ下げが激しくなります。3つのうち1番ブレ幅が小さいのはS&P500だということがわかります。投資の世界では、このようなブレ幅のことをリスクと呼びます。私たちが聞く一般的なリスクとは少し違った意味で使われています。リスクが大きいということは、ブレ幅が大きいということです。ただし、その分大きなリターンを見込める可能性があります。今回は株式同士の比較なので、同じようなブレ幅ですが、ここに金や、債券を混ぜるとブレ幅を抑えることができます。しかし、株式だけであっても20年という長い目線で見てみると年平均リターンは5%程度に落ち着くことから、株式だけの運用という考えもあるかと思います。
ここでわかることは、小型を混ぜるとブレ幅が大きくなってしまうということです。
S&P500はかなり規模の大きい企業がそろっていますが、全米株式や全世界株式は時価総額の低い企業も組み入れられています。一概には言えませんが、大きく下落するとき、リスクを回避しようとする動きがある場合、まず売られる傾向にあるのは小型株です。こういった面からも「小型」を組み入れるということはその分のリスクになる場合があります。
シャープレシオが1番高いのはS&P500
S&P500 1.06 全米株式 1.02 全世界株式 0.78
シャープレシオというのは、リスクに見合うリターンが得られているかという判断するための指標です。数値が高いほどリスクに対してリターンが得られているということになります。ソルティノレシオは、シャープレシオの改良版となっており、相場が上振れた場合を除いて計算しています。つまり、下落の動きのみをリスクとみなして算出しています。こちらも数値が大きいほど下落面に強いということになります。シャープレシオは投資信託を選ぶ際の参考のひとつとして使われますが、シャープレシオの値が高いからといって、今後も良いリターンを生み出すとは限らないので注意が必要です。
シャープレシオをみても1番数値が大きいものはS&P500ということになります。
リーマンショックの回復時はどうだったか?
少し視点を変えてみてみましょう。リーマンショック後の回復は新興国が先でした。その後、米国も回復をしていきます。そういったことから、リーマンショック後の動きは新興国を含んでいる全世界のパフォーマンスが良いことがわかります。しかし、その後米国も回復をしてくるとS&P500の方が運用成果が良くなっています。
他にも、下記の図では、2017年から現在までで切り取っています。2017年は全世界が好調だったことがわかります。
このように、データの切り取り方で運用成果の見え方が変わってきます。共通して言えることは、米国が好調な時とそうでない時があるということです。全世界への投資は、米国が不調な時期であっても成果を出してくれます。
米国株と全世界のメリット
米国株と全世界、どちらにもにメリットがあります。経費率はS&P500の方が低いですが、ほとんど変わりありません。
米国株のメリット
世界最大の経済大国に投資ができます。また、S&P500であれば、選抜された500社に投資できます。この500社は、ずっと決まった500社ではなく、定期的に入れ替えが行われています。米国株だけでは世界に投資できていない、と思うかもしれませんが、S&P500の海外売上高は4割を超えています。
このように、米国企業に投資をしていても、新興国の経済成長と共に米国企業も成長していくことになります。
他にも、米国は先進国の中でも人口増加している珍しい国です。経済成長という点からみても米国はまだまだ成長が期待できる国のひとつでしょう。
全世界のメリット
全世界のメリットは米国市場以外、例えばヨーロッパや日本が大きく成長していくと、それに合わせて国別の割合を変えていきます。現在の構成比率は、米国が約6割ですが、以前は6割もありませんでした。米国企業の成長と共に全世界に占める米国の割合が大きくなっていっています。つまり、今後、米国株が不調になったとしても、世界全体に投資しているので、米国が不調な時でも世界の経済成長に合わせて対応できるというのが全世界の強みになります。
現在の世界の覇権国は米国ですが、将来どうなるのか分かりません。中国との覇権争いがあったように、今後米国以外の国が覇権を握る…なんてこともあるかもしれません。米国株のみで不安であるという場合には全世界が良いかもしれません。
なぜ「米国株」と「全世界」で悩むのか?
米国株を選択しようとしてるけど悩んでる場合、
過去のデータから見れば米国株のみがリターンが大きいですが、将来の世界がわからないというところに不安があるのではないでしょうか。
全世界株を選択しようとして悩んでいる場合、
将来はどうなるかわからないから全世界にしたけど、今のところ米国が優位だけどなぁ…と不安があるのではないでしょうか。
これは結果をみてみないとわかりません。答え合わせは10年後や20年後の将来ということになります。不確実性のあるものに投資をするわけですから、こればかりは仕方ありません。確実な未来はわかりません。現時点でまずはどちらか決めてみましょう。その後、方向性を随時修正していけば大丈夫です。現時点では、米国が優位である中でどのように投資をしていくのか、自分なりの答えを見つけてみましょう。
NISAはまず買ってみる
NISAで一度S&P500を買ったら、ずっとそれにしなければいけないというわけではありません。来年は全世界に変えてみようといった考えでも良いです。大切なのは長期投資を実行することです。銘柄を選ぶよりも、長期間運用するということの方が難しいかもしれません。どちらか判断が決められないという場合、どちらも投資するのも手です。どちらかを決めなければいけないというわけではありません。NISAなら、S&P500を毎月1万円、全世界を毎月1万円といったように投資信託を分けても買うことができます。まずはNISAを始めることが大切です。NISAは少額からでも投資ができます。コツコツ続けることで将来の資金準備や、住宅費等に回すことができます。将来のための準備をしていくためにも、今から始めてみましょう。
まとめ
S&P500でも地域別売上高でみるとグローバル
全世界のうち約6割は米国株が占める
NISAをまず始めることが大切
投資の経験が全くないという人ほど、買うまでに時間がかかってしまいます。まずは、勇気を出して積立NISAを始めてみましょう。正解はひとつではありません。投資を始めてから気づくこともあります。実際に買うことで、自分の情報に対するアンテナが広がり、そこから、さらにブラシュアップされた投資ができるようになります。
投資で大切なのは長期間運用することです。20年という期間もあれば、○○ショックといった暴落が起きるのは自然なことです。そういったことが起きても長期投資であれば運用成果はプラスで落ち着く可能性があります。短期的にはマイナスになるときもあります。その時の市場の動きに流されないように規律を守って投資を続けていきたいですね。